星撮り日記

EQ5GOTOのオートガイドについて

2022/04/26
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機材 天体写真 EQ5GOTO
こんにちは、nabeです。
最近休みを取ったときに限って晴れずでモチベーションが上がりません。

たまには更新しないとブログの存在意義も薄れてしまうので、なにか書こうかなと思って、ふと最近EQ5GOTO赤道儀についてあまり書いていないことに気づきました。ここは久しぶりに有益(になるかもしれない)な記事でも書いておこうということで、ひとつお付き合いください。

EQ5GOTO赤道儀とは


さて、Sky-WatcherのEQ5GOTO赤道儀といえば、国内他社製品の半額以下の実売10万円で手に入る、言わずとしれた「庶民の味方赤道儀」です。
コメント 2019-09-21 013908

圧倒的低価格にもかかわらず、自動導入・追尾・PCとの接続・オートガイドなど、現代の赤道儀に求められるほぼすべてのことが行なえます。三脚やウェイト、液晶付き日本語対応ハンドコントローラーも付属して、搭載重量約9kg。スペックや付属品を加味しても破格と言って良い値段で手に入る唯一無二の赤道儀です。

しかし、ブログやSNSといったネットの評判を見ていると「安かろう悪かろう」という感じで、特にバックラッシュの多さによるオートガイドの制御に苦しめられている方が多いようです。
実際、EQ5GOTO赤道儀はEQ5という(更にいうとGPという)手動でギアを動かす赤道儀をベースに、モーターを後付けした改造機のような存在です。軽トラにDIYでターボチャージャー積んでるみたいなもんです。そのため、もともとの機械精度や組付け精度は正直あまり良くありません。

この赤道儀を手にされる方のほとんどは経験の浅い初心者で、かつての自分もそうでした。そのため、ネットに散見されるマイナスの情報に引っ張られ「オートガイドが成功しないのは機械のせいだ」と決めつけて無闇に分解したり改造したり、機械加工のアラを探して「ほら、やっぱり機械のせいだ」と自身を納得させてみたり、うまくいかないオートガイドのまま渋々使うか、手放すか、そのまま使わなくなってしまうかという負のスパイラルに飲み込まれてしまいがちです。これは実にもったいないことだと思います。

結論を言うと、EQ5GOTOのオートガイドが失敗するケースのほとんどは「極軸合わせ(設置)」と「ガイドソフトの制御」がうまくできていないからです。この2つがきちんと出来ていれば多少機械の精度が甘くてもちゃんと追ってくれます。

まあ、中には本当に機械の精度がダメダメで、設置と制御だけではどうしようもないケースもあると思います。他社製品の半額以下ですからね。コストが半分ということはそういうことです。でも、諦める前にできる限りのことをして解決しようと試みる試行錯誤は、その後高級品を買ったときにも活かされる「経験」という貴重な財産になります。EQ5GOTOがうまく使いこなせなくて、ネットの海を彷徨い、この記事を見つけたあなたは、その至宝の財産をまさに築き上げている最中だといえます。

・・・なんだか怪しい情報商材を売るような文章になってしまいました。
お金は一銭も取らないので安心してください。

実際のところ、初心者の方がその試行錯誤に費やす時間は長く、苦しいものになるでしょう。どこから手を付けていいかすら分からない暗中模索の試行錯誤は正直言って苦痛です。

その苦痛をできるだけ減らし、より有意義な試行錯誤の時間にして、効率よくスキルを磨いてほしいと思います。
今日はほぼ4年以上愛用しているなかで自分が獲得したEQ5GOTO赤道儀の設置や制御ノウハウを紹介したいと思います。
信じるも信じないもあなた次第です。

少し冗長な文章になる予定なので、結論だけ知りたい人はサブタイトルとその下の「結論」だけ読んでください。


※免責事項ですが、これから紹介するものはあくまで個人の経験の蓄積に過ぎません。すべての個体で通用するかは検証していませんし、場合によっては悪化することもあるかもしれません。当然壊れたり千載一遇の撮影チャンスを逃したりしても責任は負えませんのでご注意ください。自信のない人は自分で分解する前に購入店に相談しましょう。

搭載可能重量

結論:搭載可能重量限界まで載せてはいけない。

いきなり先程挙げたケースと違う話題ですが、これも重要なポイントです。

EQ5GOTOの搭載可能重量は9.1kgです。9.1kgといえば20cmの反射望遠鏡がギリギリ載るラインです。なので、大口径の反射望遠鏡を載せて大迫力の星雲や銀河を撮影したいと考えてこの赤道儀を買ったり、検討したりしている方もいるかもしれません。
残念ながら、それはかなり難しい試みです。

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自分自身も昔EQ5GOTOにGS-200RC(カメラ込み約8.5kg)を載せて使用していたことがありますが、完全に無風で、安定した地面で、好条件が揃えばなんとか運用出来るというものでした。快適とは程遠かったです。

たとえば、ターボのない4人乗りの軽自動車に定員の大人4人、2泊3日分の荷物も荷室に目いっぱいに積載した状態で高速道路の追い越し車線を走ることを想像してみてください。人も荷物も載るし、走れるけど、本来のパフォーマンスは発揮できませんよね。サスペンションはつぶれ、エンジンは唸り、フラフラしながらやっとの思いで追い越します。途中で登り坂なんて出てきたら追い越しすらできないかもしれません。EQ5GOTOに9kgを載せるというのはこういうことです。

9.1kgというのは限界重量で、快適重量はせいぜい5kgくらいと考えておいたほうがよいでしょう。屈折なら80mmクラス、反射望遠鏡なら150mmクラスあたりまでです。この赤道儀では欲張りすぎないのが大切です。

機材のバランス

結論:シビアになりすぎなくていい。でも、ほんのちょっと東荷重。

これは古来から言われているとおりです。赤道儀のRA(赤緯)軸の構造上完璧なバランスを取るとかえって不安定になります。
テレスコープウェスト(子午線を挟んで望遠鏡が西側にある状態)でウェイトを少し東側に寄せます。テレスコープイーストの場合は望遠鏡側を重くします。
EQ5GOTOはクランプフリーのときの動きがかなり悪いです。正確なバランス取りは難しいと思います。なので、RAは大体東荷重、DECは概ねバランスくらいの適当さでかまわないと思います。実際そうやってきて大きな問題が起きたことはありません。ギアのかみ合わせという点では少しアバウトなくらいがちょうどいいのかもしれません(笑)

ちなみに、クランプを解除したときの回転のムラや重さはオートガイドをする上でほとんど問題になりません。EQ5GOTOはクランプ時とクランプ解除時で違う部分が動く(擦れる)ためです。

極軸合わせ

結論:SharpCapProの極軸合わせ使用して、できるだけ正確に。

どんな赤道儀でも構造上絶対に避けられないのが極軸合わせです。

EQ5GOTOのオートガイドで「暴れる」のはほとんどが南北に間欠的に動くDEC(赤緯)軸です。そして、このDECは理論上極軸合わせが完璧なら補正の必要がありません。あくまで理想なので、機材のたわみや大気差によってわずかに補正は必要になりますが、極軸をできるだけ正確に合わせることで補正を必要最小限にすることができます。
コメント 2019-10-17 072329
青が赤経(RA)赤が赤緯(DEC)

バックラッシュが問題になるのもほとんどがこのDECです。基本一方向にしか動かないRA(赤経)と違って、DECは南北に逆転しながら補正を行いますが、ギアを逆転させるたびにかみ合わせが外れ、再び噛み合うまでに時間がかかり、補正が遅れます。このギアを噛み合わせるためにガイドソフトは強い補正を出し続け、噛み合ったときに急激な逆方向の補正が発生するため、またギアを逆転させるというループに陥ります。ソフト的な対処は後ほど紹介するとして、ギアが逆転するきっかけとなる極軸のズレの補正をできるだけへらすことが重要です。

EQ5GOTOに付属の極軸望遠鏡ですが、残念ながら正確なオートガイドを行うためには精度が不足しがちです。視野照明もついていないので、夜空が真っ暗な場所で極軸を合わせようとするとまずレチクルが見えません。対物レンズ側にヘッドライトなどで赤い光を入れてやっとの思いで極軸を合わせても、眼視なら十分かもしれませんが、オートガイド撮影に耐えるだけの精度が出ていないことも多いです。目盛環と同じで特に撮影のときは「飾り」と割り切りましょう。

解決策として簡単なのは、光学式の極軸望遠鏡に見切りをつけて電視極軸望遠鏡を使用することです。
製品で有名なものでいうとQHYのPoleMasterがありますが、それなりの値段がするうえに極軸合わせでしか使用できないツールなので、赤道儀本体価格の1/3ほども投資してアップグレードするのは少し勇気がいります。

自分がおすすめするのはSharpCapProの極軸合わせ機能です。
SharpCapは無料で使用できますが、極軸合わせ機能を使用するには年額12£(約2,000円)のProライセンスが必要です。日本からの購入はPayPal経由で行うと簡単です。年間ライセンスなので注意。

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SharpCapProを使用するメリットとしては

●オートガイドに使うガイドカメラがそのまま使える
●価格が安い
●操作手順が少ない

という点が挙げられます。
特に、オートガイドに使う120mmくらいのガイドスコープと1/3型くらいの小型センサーの組み合わせでも極軸が合わせられ、極軸合わせのために都度機材を付け外しする必要が無いのが大きなメリットです。
細かい操作説明などは省きますが(ネットで探せばいくらでも出てきます)、緯度経度を入力すると大気による浮き上がりも補正してくれて、かなり正確に短時間で極軸を合わせることができます。上の画像も、オートガイドに使うカメラをSharpCapでキャプチャーして行っています。

誤差10秒角以下まで追い込めれば上出来です。ビクセンの極軸望遠鏡PFL-IIの公称値が3分角以内なので、10秒角以下まで追い込めれば単純計算で1/18以下まで誤差を減らせる計算です。素の状態のEQ5GOTOの極軸望遠鏡と比べたらもっと差は広がるでしょう。

オートガイドでもできるだけ正確な極軸合わせは必要です。

PHD2のパラメーター

結論:「大きな変位に対する高速切替」はオフ。

PHD2は無料で使える超高性能なオートガイドソフトです。もしある日このソフトが突然公開停止になったら世界中の天体撮影のレベルが急激に下がるでしょう。そのくらい完成度の高いソフトで、世界中に使用者がいます。そしてほとんどの方が最初に触れるオートガイドソフトだと思います。

このPHD2の優秀な点は、パラメーターがよくできていて、ほとんどの赤道儀の場合デフォルトの設定でそつなくオートガイドを行ってくれることです。最近はマルチスターガイディングにも対応し、日本語表示も増え、欠点らしい欠点が見当たらない素晴らしいソフトです。

ただし、EQ5GOTOの場合は少し気をつけないといけない項目があります。PHD2のデフォルトパラメーターは世界中のありとあらゆる赤道儀に対応できるよう、ある種の平均的なパラメーターが採用されているように感じます。
そして、残念ながらEQ5GOTOはことバックラッシュという点に関しては「他の赤道儀よりもかなり大きい」といえる部類です。このミスマッチが「オートガイドが上手くいかない」という事象を引き起こしやすくしています。

EQ5GOTOのバックラッシュが大きいのは、設計的なものが大きく、分解して調整してもほとんど改善しません。せいぜい「ものすごく大きい」から「すごく大きい」に改善する程度です。無闇に分解して無理やりギアを密着させるとモーターが脱調するので気をつけてください。

その点を踏まえて、Advanced Settiingsの項目(脳みそマーク)を押して「algorithm」のタブを見ると、赤緯のアルゴリズムに「大きな変位に対する高速切り替え」というチェックボックスがあります。スクリーンショット 2022-04-25 235251

そしてマウスオーバーすると「マウントのバックラッシュが大きい場合、このオプションを有効にすると過修正になることがあります。」と書いてあります。
ちなみに、デフォルトでチェックボックスはオンです。

EQ5GOTOでオートガイドをする場合、この項目はオフにしましょう。少なくとも自分の環境下でバックラッシュが潜在的に大きいEQ5GOTOやAZ-GTiなどでこの設定をオフにしたところ、過剰修正を繰り返すような挙動はほぼなくなりました。

それと、その下の項目「BacklashCompensation」もオンにして、数値を入力しておきます。
これは赤道儀の個体によっても最適値は異なると思いますが、Amountに500~1000ms程度を入力してあります。EQMODなどでパルスガイドを行っていて、最小パルス長を20ms以上に設定している場合は、最小値もそれに合わせて余裕のある長さにします。
まあ正直バックラッシュ補正設定は気休めです。あまり違いを体感したことがありません。EQ5GOTOのバックラッシュがPHDでも想定外なくらい大きいためだと思います。スクリーンショット 2022-04-25 235316

よくネットで書かれている「Agr(積極性)」のパラメーターを調整するという方法も取れますが、残念ながらその方法で解決することはあまりありません。このパラメーターの影響が大きいのはRA(赤経)だからです。

また、ガイドカメラの露出時間は長い方がいいという説も最近実装されたマルチスターガイドであまり意味を持たなくなってきているように感じます。少なくともマルチスターガイドを行っているときの1~3秒くらいの露出時間のレンジで有意な差を感じる機会は殆どありません。S/Nが稼げて、修正が間に合えばいいのでたとえばF4のガイドスコープなら1~3秒くらいで調整すればよいとおもいます。自分はよく2秒を使用しています。


スクリーンショット 2022-04-26 000031

「Use multiple stars」にチェックを入れるとマルチスターガイドができます。この項目も特に理由がなければ入れておきましょう。


まとめ


色々と書きましたが、EQ5GOTOのオートガイドが暴れて、色々試してみたけど改善しない。もしかして機械のせいじゃないかと思っている方がいたら、まずこれらの内容を確認してみたり試してみたりしてください。
それでも改善しなければ極軸や機材の重量やバランスをもう一度確かめてみてください。ケーブルが引っかかっていたり風に煽られていたり、重量バランスが著しく崩れていたり、ガイドレートが合っていなかったり、ガイドスコープのピントずれや、ガイドカメラで星が飽和してしまっているなど。様々な箇所に「暴れる」要因は潜んでいます。

この記事の内容だけで完璧に改善することは稀だと思います。載せる機材や当日の風、シーイングにも左右されます。
ただ、現象を引き起こす原因に心当たりがあれば現場で対処できることも増えます。
こればかりは場数を踏んで経験を積みながら覚えていくという面も大きいです。

あと、身もふたもない話ですが、当然高級で大型な赤道儀ほどコストがかけられているのでこういった問題が少ないのも事実です。時間や手間をお金で解決したい人は、タカハシやビクセンの赤道儀の購入も検討してみるのも戦略の一つです。

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でも、EQ5GOTOも適切に制御してあげれば悪くない精度でオートガイドしてくれますよ!

値段も安く、小さくて、上位機種のEQ6Rを手に入れた今でもサブ赤道儀として大活躍し続けています。ベランダに出すのにちょうどいい大きさなんですよね。
メンテナンスも、たまにネジを増し締めするくらいで3年間ほぼノーメンテです。

取り留めのない内容になってしまったかもしれませんが、この記事がほんの少しでもEQ5GOTOのオートガイドで悩んでる人の解決の糸口になれば幸いです。

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それでは。
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